DAW 用に Windows PC の設定を最適化する
問題点や修正事項については、気づいた時点で加筆&修正します
最終更新日:2023年10月18日(補足説明を追記)
リアルタイムのオーディオ処理向けに Windows PC の最適化を行う必要性
当然、基本的な PC スペックが高いにこしたことはありませんが、PC 自体を適切に設定してやらないと高スペックなのに期待通りオーディオレイテンシを減らす事が出来なかったりしますので、基本項目から順に設定を見直し、結果を確認しながら最適化を進めて下さい(優先度の高そうな項目から順に記述しておきます)
※ 多項目を一気にまとめて設定変更するのではなく、実際の効果を確認しながら順次進めて下さい
現状問題なく動作している場合は無理して設定を弄り回さなくて結構です(笑)
▼該当項目へジャンプ
・Windows 設定
・BIOS (UEFI) 設定
・オーディオデバイスのドライバモード
・オーディオインターフェース接続ポート
・デバイスマネージャーでのデバイス電源管理
・ハードディスクドライブの構成を工夫する
・不要なデバイスドライバ類を削除する
・レイテンシー計測アプリで問題点を探す
・その他、問題を解決するかもしれない設定
・Windows の定期更新に注意
まずは、下記6点を確認して下さい(設定方法位は各自で検索して下さい)
- 電源オプション → 高パフォーマンス
高パフォーマンスが選択出来ない場合の表示方法は各自検索して調べて下さい
(究極のパフォーマンス等も存在しますが大して変わりません) - USB 省電力設定 → OFF
電源オプション【プラン設定の変更】→「詳細な電源設定の変更」で開く【詳細設定】内にある「USB 設定」で USB のセレクティブサスペンドが無効になっている事を確認して下さい(有効になっていると USB 接続されたオーディオインターフェースの動作で問題が起きる場合があります) - プロセッサの電源管理 → 最小のプロセッサのの状態 100%
電源オプション【プラン設定の変更】→「詳細な電源設定の変更」で開く【詳細設定】内にある「プロセッサの電源管理」を展開して「最小のプロセッサの状態」を【100%】に変更(最大のプロセッサの状態はデフォルトで【100%】です)
※ 電気代が気になる方は【電源オプション】をピン留めしたり、ショートカットを作成したりして、電源プランの切替が簡単に行えるようにしておき、DAW 使用時だけ「高パフォーマンスに設定」に切替えるのが良いかもしれません - CPU コアパーキング → OFF
タスクマネージャーのパフォーマンスタブ下部「リソースモニターを開く」で開いたリソースモニターで CPU タブを選択し、右側に表示される各 CPU コアに「保留」と表示されていない事を確認して下さい
(バックグラウンドで処理が行われていない CPU アイドル時に確認する事)
※ ParkControl などのフリーソフトを利用すると簡単です
※ 未確認情報:第12/13世代 Intel Core CPU では無効化できないかもしれません - E-コア 搭載 CPU 使用時 → E-コア の使用を抑制する
最近の Intel CPU は Performance-cores(P-cores)と Efficient-cores(E-cores)という2種類のコアを実装したハイブリッド仕様になっており、E-コア は P-コア に比べて非力です
この E-コア を DAW で利用しないようにする事で、パフォーマンスの向上が期待できます
※ Application Priority Changer というフリーソフトを利用するのが簡単です - WiFi → OFF
WiFi 機能は、リアルタイムオーディオに悪影響を及ぼす事が知られていますので、可能ならネット接続は有線 LAN を使用し、マザーボード内蔵の WiFi 機能は UEFI(BIOS)で元から OFF にして下さい
※ DAW 使用時だけ機内モードを ON にする手もあります
以下の Windows 設定は必須ではありませんが、他に試すべき項目が無くなった場合には試す価値があります
Cortana 音声アシスタントが不要な場合は無効化してみて下さい
音声コマンドで Windows 操作しないなら無効化しておきましょう
- 【スタート】→【設定】→【プライバシー】→【音声認識】→「オフ」
不要なバックグラウンド アプリがある場合は「オフ」にしてみて下さい
- 【スタート】→【設定】→【プライバシー】→【バックグラウンド アプリ】
また、ゲーム用に最適化する目的のゲームアクセラレータの様なアプリケーションやドライバの類が実行されている場合は、無効化(もしくはアンインストール)してみて下さい
(DAW のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります)
ちなみに「システムのプロパティ」の【詳細設定】にあるパフォーマンス設定で【プログラム】ではなく【バックグラウンドサービス】に最適化した方が例外的に良い結果を得られる場合があるので、切替えて両設定で運用してみてご自身のシステムに合った方に設定して下さい
この設定は、下記の様に稀なケースでのみ効果を発揮する場合があります
- 特殊な例ですが、DAW 本体プログラム(UI 画面)から DAW のオーディオエンジンプロセスが独立しており、オーディオエンジンがフォアグラウンドプロセスではない場合
- 殆どの場合 ASIO ドライバーは DAW のインプロセスとして実行されますが、インプロセスとバックグラウンドサービス間で分割処理を行う特殊なドライバー構造の場合
- 可能性は低いですが、ASIO でなく WASAPI モードを使用している場合、DAW の負荷状態によっては改善するケースがあるそうです
更に、システム構成や OS バージョン等によっては BIOS でも設定してやる必要がある場合がありますので、Windows で各種設定を最適化しても結果が芳しくない場合は、下記 BIOS (UEFI) 設定も確認して下さい
下記設定により CPU の省電力機能をオフにしますので、主に待機時消費電力が上昇してしまいますが、オーディオ処理をリアルタイムに漏れなくこなすためには必要な設定だと理解して下さい
(長時間 PC から離れる時はシャットダウンしましょう)
- Intel Hyper-Threading Technology → Enable(有効)
- Intel Enhanced Intel SpeedStep Technology (EIST) → Disable(無効)
- C-State (C1E Support, Enhanced HALT State) → Disable(無効)
※ 搭載されている BIOS によっては設定名称が異なっていたり設定項目が無かったりします
(その際は、設定可能な物だけ設定してみましょう)
※ 別途ダイナミックパフォーマンス系オプションの無効化が効果を発揮する事もあります
(出来れば避けたいですが、Turbo Boost 等の無効化を試みるのも手です)
※ WiFi 内蔵マザーボードの場合は、BIOS で WiFi を無効化する事をお勧めします
(勿論、有効でも問題が発生しない場合は有効のままで結構です)
基本的にデバイスのメーカーが専用の ASIO ドライバを提供している場合はそれを使用し、それ以外は WASAPI(排他 or 共有)モードを使用して下さい(再生&録音時の低遅延を実現するための優先事項です)
- オーディオインターフェース使用時
メーカーが提供する最新の ASIO ドライバを利用して下さい
ASIO4ALL の利用を推奨する安価なオーディオインターフェースはお勧めしません - マザーボード内蔵オーディオ使用時
Realtek HD オーディオ等を利用する場合は、基本的に WASAPI 排他モードを使用して下さい
DAW 使用中も他のアプリケーションからの音声を聞きたい場合は WASAPI 共有モードを利用
Realtek 用 ASIO ドライバが存在するようですが出来が悪いので使用しないで下さい
ASIO4ALL は WDM モードを見せかけ上 ASIO とするだけのラッパーですので意味がありません
再生時にノイズが発生する場合、各ドライバのバッファサイズを少し増やして改善されるか確認して下さい
※ オーディオインターフェースと Windows サウンドの設定でサンプルレート(ビット深度ではない)が異なると問題が発生するので、必ず同じサンプルレートに設定して下さい(オーディオインターフェースとマザーボード内蔵オーディオを同時使用すると問題が発生する可能性がある点もご留意下さい)
USB オーディオインターフェース利用時に原因不明の問題に遭遇した場合、接続する USB ポートを変更する事で安定する場合があります
特に、同じルートハブ上に他の USB 機器が接続されている場合、接続デバイスの種類や数によっては帯域幅が不足する場合があるため、オーディオインターフェース以外の USB 機器は、出来るだけ別の USB ルートハブに接続する事で問題を回避出来る場合があります
USB Device Tree Viewer というフリーソフトを利用すると、どのポートに何がどの速度で接続されているかが一目瞭然で、接続の偏りを簡単に確認出来ます(このアプリの最終更新日がわかりませんので、最新のチップセットや最新のポート仕様等への対応状況がわかりませんので、それらがどの様に表示されるのかは不明です)
※ USB2.0 仕様のオーディオインターフェースを、非 Intel チップセットの USB3.0 ポートに接続していて問題がある場合は USB2.0 ポートに接続して下さい(USB2.0 ポートが無い場合は泣いて下さい)
前述した USB 省電力設定だけでは不完全な場合があるようです
その場合、下記 USB ハブ電源の管理も試してみて下さい
- デバイスマネージャーを開く
- ユニバーサル シリアル バス コントローラーを展開
- いくつか並んでいる ~ハブ(~ Hub)を順に右クリックしてプロパティを開き、【電力】タブ内「接続されているデバイス」欄に目的のデバイス名(オーディオインタフェース等)が表示されているハブを探す(見つかるまで全てのハブをチェック)
【電力】タブが無い場合の特定方法は今のところわかりません(知ってる人は教えてw) - 上記が見つかったら【電源の管理】タブに移動し「電力の節約のために、コンピューターでこのデバイスの電源をオフにできるようにする」のチェックを外して【OK】ボタンをクリック
この設定は、接続が不安定な USB 外付け HDD にも有効な場合があるようです
また、デバイス【詳細】タブの親値に対応するレジストリキーに「DeviceHackFlags」16進数 400 を追加する事で、更に強制的な制御が可能になるようですが、そちらは各自検索して自己責任で試して下さい
複数の物理ドライブ(パーティションではない)を使い分ける事で、システムが安定する可能性があります
ドライブ | 種類 | 使用例 |
C | ブートドライブ | Windows OS, 各種アプリケーション, VST プラグイン等 |
D | データドライブ | Virtual Instruments サンプルライブラリ, SoundFont, 音源データ類 |
E | データドライブ | DAW プロジェクトファイル(オーディオ含む) |
基本的に SATA 接続以上の速度が出る SSD が望ましいですが、プロジェクト保存用ドライブについては大量のオーディオトラックを含むプロジェクトを扱わない場合は HDD(7200 rpm)でも問題ありません
特に長年使用している PC の場合、不要なデバイスドライバがシステムに残っている場合があります
Windows デバイスマネージャーを開き【表示】メニューの「非表示デバイスの表示」にチェックを入れると大量に無駄なデバイスが並んでいる場合があるようです(私の PC では見たことありませんが…)
その場合、不要なデバイスの削除方法を検索して安全に消せそうな物を判断して削除して下さい
過去に使っていたが現在は使っていないデバイスなどは削除しても問題ないと思いますし、「不明なデバイス」と表示されているものは削除した方が良いようですので、しっかり調べて自己責任で行ってください(削除後「ハードウェア変更のスキャン」ボタンをクリックしておくと安全かもしれません)
※ このようなドライバー削除などの作業を行う際は、事前にシステムバックアップを行って下さい
(日頃から、アプリの追加&削除等、システムに変更を行う際はバックアップする癖をつけましょう)
各種設定を最適化してみたものの、ASIO バッファーサイズを大幅に大きくしないと再生ノイズやドロップアウトが起きてしまう場合、下記のアプリケーションを利用する事で原因を特定出来る場合があります
- LatencyMon
DPC Latency を引き起こしているシステム上のプロセスを発見するのに役立ちます
問題のプロセスが削除もしくは停止可能な物なら、その様に設定しましょう
(削除や停止可能な物かは、自己責任でしっかり調べて判断して下さい)
必要なドライバ由来の場合は、ドライバ再インストールやバージョン変更等の対応が有効です - DPC Latency Checker
配布終了した様です(https://www.thesycon.de/eng/latency_check.shtml)
起動しておくとリアルタイムで DPC Latency 最大値を表示していきますが、グラフが赤い領域まで飛び出している様なら原因を特定する必要がありますので、その際は上記 LatencyMon で問題のプロセスを探し、削除や停止が可能な物かをしっかり判断してから適宜処置して下さい
※ 一部不正確な結果を提示する事もあるそうなので、既にお持ちの方も目安程度に考えて下さい
※ ベンチマークソフトではありません
(計測結果がオーディオパフォーマンスに直結するわけではない点に注意して下さい)
ちなみに、程よく最適化されたミドルスペック PC に数万円程度までの比較的安価な価格帯のオーディオインターフェースを繋いだ場合、ASIO バッファサイズは 200~500 samples 付近で落着くようですので目安として下さい
(更に高価格帯の物は 200 以下でも安定動作し、最近の出来の良い製品は理想的な環境下なら 32 samples で動作可能な物もあるようです)
高スペックマシンにも関わらず、小~中規模プロジェクトでも音飛びやノイズが起こり、且つオーディオインターフェースのバッファサイズを増やしても症状が改善しない場合は、DAW などのアプリケーションを疑う前に DPC Latency を疑って下さい
また、レコーディング時だけバッファサイズを絞り低レイテンシーで録音を行い、それ以外はバッファサイズを安定域まで増やしてミックス作業などを行う方が多いようです(録音トラック以外をフリーズする等の工夫も必要)
Windows 自体の起動が不安定だったり、各種デバイスの追加&取外しやドライバに関連していそうな問題が起きているにも関わらず、原因を特定できない場合、Windows の「高速スタートアップ」を無効にしてみて下さい
この「高速スタートアップ」というのは、Windows の各種状態を保持したままシャットダウンする事で、次回起動速度を上げようというものなので、ハードウェア構成が変わった場合などには、これが裏目に出る事となります
更に「高速スタートアップ」が原因で Windows Update に失敗するケースもあるようです
よって、これを無効化する事で特定の問題が解決する場合があります
【コントロールパネル】→【電源オプション】→【電源ボタンの動作を選択する】
「高速スタートアップを有効にする(推奨)」のチェックを外して【変更の保存】
※ 設定項目がグレーアウトしている場合「現在利用可能ではない設定を変更します」をクリック
※ 設定項目が「スリープ」「ロック」の2項目しか無い場合、コマンドプロンプトを管理者権限で開き「powercfg.exe /hibernate on」と入力し Enter
(電源オプションを閉じてから、再度開き直すと項目が4つに増えます)
ちなみに、タスクバーの「検索ボックス」に「コントロールパネル」と入力すればコントロールパネルを容易に開くことができます(もしくは【スタートボタン】右クリックメニューから【電源オプション】を開き、右エリアにある関連設定「電源の追加設定」をクリック)
基本的に毎月定例で配信される Windows Update ですが、これを行った際に各種設定がリセットされる場合があるようですので、Windows が更新された後に問題が発生した場合、前述した「Windows 設定」や「デバイスマネージャーでのデバイス電源管理」等を再確認して下さい
また、たまに配信される大型アップデートの際は、マシン ID も変わってしまうため、特定のプラグインで認証が外れる場合がありますので、その際は再インストールや再認証が必要になります
念のため言及しておきますが、Windows のインストール直後は勿論、アップグレードやアップデート直後は OS が必要な最適化処理などを行っているため、一定時間 PC のパフォーマンスが落ちます
(通常 PC がアイドル状態になってから長くても数時間で完了します)
▼最後に…
記事中に誤字脱字やデッドリンクを発見した場合、当方 SNS 等へ連絡して頂けると助かります
また、リンク先が内容変更で当方の意図しない状態になっている場合もご指摘頂ければ幸いです
その他、不明な点があれば当ブログ左バー内「私的サイトリンク」に記載の各 SNS 等にご連絡下されば可能な範囲で対処します(但し、検索すれば解決するような Windows 操作全般の初歩的質問はご遠慮下さい)
余談になりますが…
いまだ「デスクトップにアイコンが沢山並んでいると PC の動作が重くなる」といった類の助言をする人を見かけますが、この手の方は知識不足か誤情報を信じている可能性が高いので、鵜呑みにしないようご注意下さい
(確かにデスクトップの再描写には時間を要しますが、PC 動作自体が遅くなるわけではありません)
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